最近入手した書籍(新刊本とは限らない)の中から、いくつかをご紹介しようと思います。
2006年1月購入。『古記録入門』を先に出しておいてよかった、と思ってしまいました。でも、天に唾をするようですが、「入門」というにはちょっとレベルが高いかな。私のような漢籍に疎いものが知りたいのは、『礼記』や『白氏文集』を見るとしたら、どの活字本がいいの?注釈書の出来はそれぞれどうなの?そういうことなんですけどね。
2006年1月受贈。私もかかわった古文書・記録類編の続編です。時間がかかりましたねえ。いろいろと事情はあったらしいですが。ご苦労様でした。
2006年1月購入。「あかね会」、何それ?って感じですが、序文を見ると、赤木志津子・青山なを・阿部俊子・円地文子・大井ミノブ・関みさを・関根慶子というお歴々。恐ろしいばかりの女性史・中古文学研究の先人たちの会だったことがわかります。源氏物語や宇津保物語などの文学作品を読むための服飾辞典なのですね。もちろん記録類を読むときの参考にもなります。最大の特徴は、出典が用例とともに活字本のページ数まで掲載されていること。その量も一つや二つではなく、かなり充実しています。使われているのは、まず日本古典文学大系(岩波書店)。それに所収されていない作品は日本古典全書(朝日新聞社)、岩波文庫、古典文庫、群書類従などが用いられています。
2006年2月購入。「ふみくらしょうりょう」と読むそうです。美しいカラー図版を多用した、見ていて楽しい書誌学の本です。これまでの書誌学の本は、味も素っ気もないものばかりでした。内容的にも、江戸時代の版本の書誌学では、我々には役に立ちません。ところがこの本は書陵部所蔵の古写本を贅沢なまでに使って、解説しています。概説的な事柄から、書陵部所蔵本の書誌学的なマニアックな解説まで載っています。絶対にお勧め! この本が3800円というのはお得です。
2006年3・4月受贈。前者の『〜探求』は阪大の共同研究報告書、後2者は科研報告書です。寺院聖教のディープな世界が展開されています。この報告書に田中本『菅芥集』という面白い史料が翻刻されていることは以前ご紹介したとおりです。
2006年5月受贈。こちらもまた違ったディープな世界。論考編には、小川剛生「藤原宗輔年譜考」をはじめ、『山槐記』『玉葉』『台記』『水左記』の音楽関係記事に関する論文が収められています。資料篇には、上野学園日本音楽資料室の史料目録のほか、『教訓抄』編年年表、群書類従管絃部の事項・人名索引、『続教訓抄』人名索引などが掲載されています。
2006年6月購入。院政期の軍事・警察制度の研究で知られる著者の新刊。またしても自費出版を手がける出版社からの刊行です。「傍流伊勢平氏の興亡を余所目に、摂関家の家司の立場を守り続けた人物」という副題がついています。確かに、信範を一言で言えばそうかもしれないけど、それだけじゃないだろうという気もします。それにしても、脇役中の脇役である信範の伝記が出るというのは驚きです。基本的には『兵範記』ほかの史料から構築された記述で、補注に引用されている研究文献は僅か。中原俊章『中世公家と地下官人』が最新かも??信範の家族に関する章もありますが、勝浦令子氏のお仕事や拙稿は知るよしもないのでしょう。
2006年6月購入。いや〜、建築史の本が続けざまに出ますね。歓迎すべきことですが、いかんせんどれも高すぎる。そんな立派な箱に入れなくてもいいから、もう少し安くしてください。東三条殿や法住寺殿については、太田静六氏の研究を大きく塗り替えたと言ってもいいのではないでしょうか。
2006年6月受贈。これもCOEの報告書。驚くべきハイペースでの刊行です。様々な講式類の翻刻や紹介が収録されています。いや〜、大きな額の研究費もらうと大変ですね。
2006年6月購入。すでに書評など色々なところで紹介されているので、取り上げるまでもありませんが、歴史研究と文学研究の接点は斯くあるべきというような本です。角川源義賞を最年少で受賞したのも当然でしょう。逆立ちしてもかないません。小川氏、某研究所の某氏、そして私が顔を合わせると、結構マニアックな会話になりますが、ある時のこと、小川氏云く、「僕たちもマニアだけど、彼に較べると、堕落したよね」。そう言わせる求道者が世の中にはいるんですよ。
2006年6月購入。以前、このシリーズの『五宮灌頂記』はご紹介しました。その続編とも言えるものが出ていたのは知りませんでした。阿部泰郎編『『新蔵人物語』絵巻の研究』(名古屋大学文学研究科比較人文学研究室、2006年3月)というのも出ておりました。仁和寺資料4の方は、web-catを使ってもヒットしませんでした。探し方が悪いのか?