最近の書棚から 2005年7月〜12月



川瀬一馬編『田中教忠蔵書目録』(田中穣〔私家版〕、1982年11月)


 2005年7月購入。実は持っていなかったんです。何年か前に古書店の目録で見つけて注文したことはあったんですが、既に品切れ。気にかけていて、ようやく入手しました。これまでどうしていたかというと、歴博での作業用に使っていたコピーをずっと使っていたわけです。こちらには書き込みもあるんで、これからもそちらを使うことが多いとは思いますが、やはりちゃんとした本も持っていなくては、申し訳ない。是非、歴博の田中本目録と較べてみてください。もちろん、1,2度原本を見ただけで、この目録をつくってしまった川瀬さんもすごいと思います。

横須賀市編『占領下の横須賀―連合国軍の上陸とその時代―』(横須賀市、2005年3月)


 2005年8月受贈。横須賀市史編纂の過程で、近代史の担当者がアメリカで収集した写真を中心とした写真集です。これがとても面白い。1944年にB29が撮った空撮写真やそれを元にした横須賀基地の分析図なんかがあるんですね。従軍カメラマンが撮った各地での上陸の様子や基地引き渡しの様子(これがなんとカラー写真)、旧日本軍の航空機などが焼却されている場面の写真、そして日本海軍に唯一残された航行可能な戦艦、連合艦隊の旗艦でもあった長門の接収、原爆実験による長門の最期なんていう写真もあるんですよ。占領下の町の様子、人々のくらしに関する写真もあります。路地でキャッチボールをしていると、米兵が通りからカメラを構えて写真を撮っていた、そんな子どものころの光景が思い出されました。もちろん私の子ども時代は占領下ではありませんが・・・。とにかく面白い写真集です。ぜひとも御覧下さい。詳しくは横須賀市史編さん室にお問い合わせを。


神奈川県立歴史博物館編『聖地への憧れ―中世東国の熊野信仰―』(神奈川県立歴史博物館、2005年10月)


 2005年10月。ちょっと飛びます。この間に引っ越しをしまして、バタバタしていました。いやぁ、段ボール300箱の本の引っ越しは大変でした。荷造りにひと月。
 さて、県博でとても面白い展示がありました。その図録です。ここ数年で見事に県博が再生したという印象でした。やっぱり人材こそ財産ですね。この展示でも越後国奥山荘関係の史料や、陸奥国名取・会津の史料が出品されていましたが、みんな三浦一族の所領なんですね。11月の三浦一族研究会のシンポジウムでも発言したとおり、熊野信仰と修験のネットワーク、つながりは三浦一族をはじめとする東国武士や中世の流通・交通を考える上で、一つのカギになると思います(『三浦一族研究』10号、2006年6月)。


佐藤進一・百瀬今朝雄・笠松宏至編『中世法制史料集 第6巻 公家法・公家家法・寺社法』(岩波書店、2005年9月、\12,000)


 2005年11月購入。ようやく完結です。「出版物年末回顧」にも書きましたが、第1巻鎌倉幕府法の刊行から50年ですよ。学部生時代にこれは持っていた方がいいと恩師に言われ、清水の舞台から飛び降りる気持ちで鎌倉幕府法を古本屋で買ったなあ。もうそれからでさえ20年以上ですもんね。さあ、この巻をどう使うか、鎌倉幕府法ほど便利じゃないし、なかなか難しそうです。とりあえずは『法曹至要抄』『裁判至要抄』、それから各公家新制の基本テキストという位置づけになるでしょうか。

小松茂美編『続々日本絵巻大成』伝記・縁起篇1〜8(中央公論社、1993年〜1995年、各\45000)


 2005年11月購入(4のみ2006年4月購入)。『日本絵巻大成』と『続日本絵巻大成』は、一部の所収論考を割愛して、それぞれ『日本の絵巻』『続日本の絵巻』として普及版が刊行されていますが、この『続々日本絵巻大成』はまだ普及版が出ていません。1「善信聖人親鸞伝絵」、2「日蓮聖人註画讃」、3「頬焼阿弥陀縁起・不動利益縁起」、4「西行法師行状絵巻」、5「清水寺縁起・真如堂縁起」、6「東大寺大仏縁起・二月堂縁起」、7「箱根権現縁起・誉田宗廟縁起」、8「東照社縁起」という、室町時代から江戸時代に制作された絵巻がラインナップされています。この中では、「清水寺縁起」の坂上田村麻呂の活躍を描いている場面や「不動利益縁起」の井戸端で洗濯する女性の場面、「真如堂縁起」に描かれた足軽などが比較的おなじみではないでしょうか。でも、この定価はあまりに高すぎですよ。


東京大学史料編纂所編『東京大学史料編纂所の国宝・重文名品展』(2005年11月、東京大学史料編纂所)


 2005年11月受贈。3年に一度行われる史料編纂所の大展示の図録です。2007年4月から『東京大学史料編纂所影印叢書』の刊行が始まるのを記念して、そこに所収を予定されている所蔵品を中心に展示が行われました。図録には国宝・島津家文書から「歴代亀鑑」「宝鑑」、重要文化財「和歌真字序集」「南無阿弥陀仏作善集」「台記」「林家関係史料」などが収められています。指定外のものでは「右衛門督補任」「検非違使補任」「後嵯峨院北面歴名」「大将補任」が注目されます。所員による「解説と釈文」も有益です。


『新修日本絵巻物全集』全32巻(角川書店、1975〜1981年)


 2005年12月購入。大部です。重いです。場所をとります。フルカラーではありません。でもこのシリーズにしか入っていない絵巻が結構ありますし、鈴木敬三氏の有職故実に関する論考をはじめ、解説が魅力的です。揃いだと結構高価ですが、欠本のあるものを安く買い、欠分は端本を購入することで、かなり安い値段で買っています。もちろん他の書店で欠本分が埋められることを確認した上でですよ。そうしないと第2期分や別巻は探すの大変ですから。

勝山清次・早島大祐編『京都大学文学部日本史研究室所蔵和書目録』(2005年3月)


 2005年12月受贈。京都大学文学部日本史研究室に所蔵されている和書の目録で、影写本・写本類と一部の原文書がその対象となっています。目録は「古文書室架蔵分」と「別置分」とに分かれ、前者は国別、後者は請求記号順に配列されている。巻末には索引があるので、どのような書籍・文書が所蔵されているのか、一覧できて便利です。