2000年7月購入。定価だけ見るととんでもない本を購入していると思われてしまうかも知れません。でも、買った値段はそれぞれ¥5000以下です。最近、この「復刻日本古典文学館」のゾッキ本が古書店でよく見られます。今回のものは読書通信社というところの通販で買ったもの。倒産した出版社の商品や、在庫処分で放出された、いわゆる「ゾッキ本」最近の用語で言うと「自由価格本」を扱っているところで、時々ダイレクトメールが来ます。前回のDMには平凡社の日本歴史地名大系既刊分もあったなぁ(たしか30万くらいの値段。もちろん買っていません。スペースがないしね)。今回の目玉はこの複製本シリーズ。ほかにも『日本霊異記』とか『古今和歌集』とか『無名抄』『和泉式部日記』『蜻蛉日記』などなど。定価¥23000〜99000のものが¥3580〜6480だから驚きです。折り本仕立ての蒙古襲来絵詞¥8000もありました。さて、『関白内大臣家歌合』は巻子本、『厳島御幸記…』は綴葉装でそれぞれ桐箱入り、『保元物語』は袋綴装で帙入りです。保元物語には朱点も入っている。以前に購入した『源氏物語奥入』の装訂には不満がありましたが、これは原装まで復原していて満足です。綴葉装の説明や帙の説明が実物でできるぞ〜。絶対お勧めの品々です。でもこの覆製を1000部とか2000部(通し番号入り)作ったんだから、このご時世、厳しいわなぁ。
2000年5月〜7月購入。妻が購入した井上氏の歌壇史・歌人伝シリーズ5冊のうちの4冊です。品切れの歌壇史 南北朝はまだ入手していません。歴史の人間が見ると、「ほお、こいつ歌人だったのかぁ」というような人物がたくさん登場。メジャーな人物から、知る人ぞ知るマイナーな人物まで。普段、歌人の側面なんか念頭に置いていないことが多いですからネエ。伝記史料も歴史の人間には馴染みの薄いものが多く、その点でも勉強になります。中世の公家のことをやろうという人には参考になる立派な研究です。ただ改訂新版・増補版という出版の形には考えさせられるところがなくもありません。研究者・著者の良心として、再版に当たって、初版刊行後に知り得た情報を加え、必要な訂正を施して出したいというのはよくわかります。でも一方でそれは初版を購入した読者に対して失礼ではないのかと思ってしまうのです。必要ならば1万円もする本を買い直せというのはちょっと横暴かなあ。増補部分が数十頁に及ぶ場合には、その部分を別刷りにして有償頒布するような良心が出版サイドにあってもいいのではないかと思います。版を改めるたびに何十箇所もの修正を施している史料集にも同じ様なことが言えるのではないでしょうか。新しい本に正誤表を数頁綴じ入れただけでは、旧版購入者には届きません。その点、きっちりとした正誤表を読者に頒布した『大日本古記録 小右記』(岩波書店)のような形が理想的です。『建内記』の正誤表は史料編纂所に架蔵されていますので、旧版をお使いの方は一度利用してみて下さい。
※11月に『中世歌壇史の研究 南北朝期 改訂新版』(明治書院)を購入しました。
2000年8月購入。書誌学は経験がものをいう世界。しかも話が細かい。書誌学関係の辞典はいくつかありますが、著者によって呼び方すら違うという場合も少なくありません。代表的なものは川瀬一馬の『日本書誌学用語辞典』(雄松堂書店)と長澤規矩也の『図書学辞典』(汲古書院)ですが、前者は入手しにくい状況です。そうした中で、3400項目にも及ぶ、現時点での指標となるべき辞典が出されたのは歓迎すべきでしょう。五十音順の配列ですが、分野別項目一覧も付されていて「何て呼んだらいいんだろう」という場合にも便利です。巻末の索引も充実。
※11月に『日本書誌学用語辞典』(雄松堂書店)を購入しました。
2000年8月購入。定家関係の本は多いですね。その中でも基本の1冊といえばこの本ではないでしょうか。第1編生活、第2編和歌、第3編歌論という構成で、最後に詳細な年譜が付されています。著者は文学研究者ですが、『明月記』に基づく第1編も詳細で、定家の家族関係や邸宅、家領荘園などについて、かなりの頁が割かれています。この本と村山修一『藤原定家』(人物叢書)があれば、定家周辺に関する基本は押さえられるのではないでしょうか。定家の和歌という側面では、安東次男『藤原定家』(講談社学術文庫)、久保田淳『藤原定家』(ちくま学芸文庫)も見ておいた方がいいとは思いますが・・・。そうそう堀田善衛『定家明月記私抄』(ちくま学芸文庫)もありました。
2000年8月購入。定家のライバルといえば源家長、彼の歌日記に関する基本文献がこの本です。『源家長日記』の本文自体は続々群書類従にも収録されていますが、やはりそれでは読みにくい。そこでこの本の登場ということになります。でも、古書店でも結構高価。恒例夏の古書市で、比較的安かったので買えました。以前、『風俗史学』1号(1998年)誌上の座談会でも述べましたが、古記録論‐日記論をする上でも、12世紀末から13世紀前半に男性の手になる仮名日記(『安元御賀記』『源通親日記』『源家長日記』など)が出現し、定家も『明月記』を一部仮名で書くようになることをどう考えるかという点は重要でしょう。
2000年9月購入。便利堂の刊行と言うだけあって、なかなか凝った作りの本です。A5変形の版形で、表紙は白で雲母交じり、題名と著者名は中村氏の直筆をもとにした押し型を使って刻まれています。用紙は厚手の洋紙で、袋綴じのようになっており、前後に和紙の遊び紙がついています。本文は42頁で、第1章起請文、第2章起請紙という構成、そのあとに2色刷の口絵1点と白黒の図版41点が載せられています。八咫烏をデザインした箱には題箋もついていました。限定800部の番号入りです。起請文に関する数少ない専門書の一つですが、No.1の座は千々和到氏を中心に作られた『牛玉宝印―祈りと誓いの呪符―』(町田市立博物館図録78集、1991年11月、町田市立博物館)に取って代わられました。この図録は力が入りすぎて展示に間に合わず、展示期間が終わってから刊行されたというものでした。今となっては、なかなか手に入りませんが、とても良い図録です。
2000年10月購入。戦後まもなく刊行された「国民生活記録叢書」のうちの2冊です。この叢書は古代から明治に至る33点の日記・記録をとりあげて、その内容を紹介し、時代相をみていこうというもの。それに日記概説という1冊も挙げられています。そういえば、そんな企画がほかにもあったじゃないかって? そう、そしえての「日記・記録による日本歴史叢書」は数点の刊行で途絶してしまった高桐書院の企画を引き継いだものです。確か、高桐は明月記、春日社家記録、言継卿記の3冊を刊行したはず。そして、そしえて版は中右記、看聞日記、大乗院寺社雑事記、言継卿記、蔭凉軒日録、朝鮮日々記・高麗日記、平戸オランダ商館・イギリス商館日記の7冊で中断されています。やはり難しい企画なのでしょうかねえ。ともに今みると、へえこんな人がこの書目を書くことになっていたのかという面白さがあります。同様のことは吉川弘文館の「日本歴史叢書」や至文堂の日本歴史新書などにおける初期刊行分の「続刊予定」などにも当てはまります。
そこで、「国民生活記録叢書」の目録をご紹介(物故者が大半ですので許されるでしょう)。このうち、坂本氏の六国史は『六国史』(日本歴史叢書、1970年、吉川弘文館)、林屋氏の園太暦は『内乱の中の貴族―南北朝期『園太暦』の世界―』(季刊論叢日本文化1、1975年、角川書店。のちに角川選書として刊行)、芳賀氏の実隆公記は『三条西実隆』(人物叢書、1960年、吉川弘文館)に形を変えて結実しています。
※高桐書院からは『宗湛日記』も刊行されていました。前記の3冊とあわせて4冊です。失礼しました。
時代 | 書 名 | 副 題 | 著者名 | 時代 | 書 名 | 副 題 | 著者名 | |||
1 | 上代 | 六国史 | その性格と時代 | 坂本 太郎 | 18 | 室町 | 康富記 | 室町時代一宮人の生活 | 平山敏治郎 | |
2 | 平安 | 小右記 | 宮廷貴族の一断面 | 竹内 理三 | 19 | 〃 | 蔭凉軒日録 | 室町時代の禅宗 | 桜井 景雄 | |
3 | 〃 | 春 記 | 小野宮資房と後期摂関政治の諸相 | 桃 裕行 | 20 | 〃 | 大乗院寺社雑記 | 中世の寺院生活 | 森末 義彰 | |
4 | 〃 | 中右記 | 平安時代後期に於ける一公卿の生活 | 小島小五郎 | 21 | 〃 | 実隆公記 | 三条西実隆とその時代 | 芳賀幸四郎 | |
5 | 〃 | 兵範記 | 林屋辰三郎 | 22 | 〃 | 碧山日録 | 応仁の乱前後の社会と其心的傾向 | 柳山 淳 | ||
6 | 〃 | 台 記 | 藤谷 俊雄 | 23 | 〃 | 後法興院記 | 宝月 圭吾 | |||
7 | 鎌倉 | 玉 葉 | 九条兼実と其時代 | 福尾猛市郎 | 24 | 〃 | 言継卿記 | 転換期の貴族生活 | 奥野 高広 | |
8 | 〃 | 明月記 | 鎌倉時代の社会と世想 | 村山 修一 | 25 | 安土桃山 | 御湯殿上日記 | 戦国時代の宮廷生活 | 奥野 高広 | |
9 | 〃 | 吉記 吉続記 | 吉村 茂樹 | 26 | 〃 | 宗湛日記 | 神谷宗湛とその時代 | 桑田 忠親 | ||
10 | 〃 | 吾妻鏡 | 武家社会とその文化の形成展開 | 藤 直幹 | 27 | 〃 | 慶長日件録 | 近世の黎明 | 岩城 隆利 | |
11 | 〃 | 勘仲記 | 龍 粛 | 28 | 〃 | 基熈公記 | 元禄文化と公卿の生活 | 石田 一良 | ||
12 | 〃 | 春日社家記録 | 鎌倉期社会の一断面 | 永島福太郎 | 29 | 〃 | 耶蘇会士日本通信 | 西洋人の見た戦国の日本 | 藤谷 俊雄 | |
13 | 吉野 | 花園院宸記 | 吉野時代学問と思想 | 前田 一良 | 30 | 江戸 | 仁斎東涯日記 | 内藤 晃 | ||
14 | 〃 | 祇園執行日記 | 中世に於ける京都の世想 | 村山 修一 | 31 | 〃 | 昨夢記事 | 幕末に於ける輿論の展開 | 小倉 親雄 | |
15 | 〃 | 園太暦 | 南北朝時代の京都と洞院公賢 | 林屋辰三郎 | 32 | 〃 | 俳人日記 | 江戸時代俳人の日記 | 穎原 退蔵 | |
16 | 〃 | 空華日工集 | 五山文学者の生活 | 篠崎 勝 | 33 | 明治 | 岩倉公実記 | 彼の生涯と時代 | 高瀬 重雄 | |
17 | 室町 | 看聞御記 | 室町の政治と芸術 | 赤松 俊秀 | ‐ | ― | 日記概論 | 中村 直勝 |
2000年10月購入。戦後まもなく刊行された古典的な本です。序文は昭和19年に書かれていますから、「国民の決戦志気をぢかに鼓舞する国史書をかくことは、無論、その最も優越なありかたであらう」「大東亜建設の一翼を荷担することにもなるであらう」なんていう文章が出てきます。GHQはこういう学術書までは見なかったんでしょうかね。同時期に著述、刊行された石母田正『中世的世界の形成』とは違った学問的動向が感じられます。三条西実隆やこの時期の書物のことを研究するには、今なお輝きを失っていない大著でしょう。
2000年10月購入。発売当時「まあ、いいか」と思って買わなかったのですが、最近になって「やっぱり買っておけば良かったかなあ」と思っていた本です。内容は平安京やその周辺の別業地域の発掘成果を紹介したもの。遺構は坊条ごとに、遺物は品物ごとに説明されています。本書の遺構に関する部分は、『角川地名大辞典 京都府』の「平安京」の考古編とも言えるものです。まあ、古代学協会や京都市埋蔵文化財研究所などから出されている多くの発掘調査報告書のエッセンスですね。図版もふんだんに載っています。考古の図面や計測図が苦手な私にはこの程度で充分。今では版元品切れで、古書店価格だと2万円くらいですかネエ。その値段じゃあ買いませんが、数千円だったんで購入しました。古書店の目録を見ていたら、同じく古代学協会・角川書店コンビの『平安時代史事典』が8万円になっていました。これは買っておいて良かった。文化振興財団の切り捨てで業界を騒がせた角川書店のことだから、売れない本は重版しないだろうしね。まだ在庫がある本は、今のうちに買っておかなきゃいけないかも。たとえば、日本古代地名辞典とか竹内理三の著作集とか。そうそう、『角川絵巻物総覧』を置いてある本屋さん知りませんか。知っていたら教えて下さい。譲って下さる方も歓迎です。
2000年10月購入。今年一押しの本といってもいいでしょう。すごく良い本です。網野氏の対談というと著名な文化人相手に「日本文化論(百姓≠農民論)」の世界を展開するというのが昨今の定番ですが、ここでの網野氏はちょっと違う。この本に登場する網野氏は『中世東寺と東寺領荘園』や『日本中世土地制度史の研究』の網野氏なのです(後半は『日本中世の非農業民と天皇』の網野氏も登場)。もう一方の笠松氏は中世法研究の第一人者で、古文書読みの達人。この二人が、嘉禎4年(1238)10月の六波羅下知状(東文書)と建長元年(1249)7月の関東下知状(宝菩提院文書)を取り上げて読んでいきます。土地制度や租税に関するところは笠松氏が網野氏に質問し、法理や裁判制度に関する部分は網野氏が笠松氏に聞く。碩学の二人でゼミをやっているような感じです。レベルは当然高い。でもとても勉強になります。これ、シリーズ化してもらえませんかネエ。ほかのメンバーでもいいな。笠松氏と新田英治氏・百瀬今朝雄氏の3人で『満済准后日記』を読むとか。とにかくお勧めの1冊です。
2000年11月購入。『史料綜覧』が10年ぶりに復刊されました。今の大学院生だと、今回の復刊でようやく買えたという人も多いのでは? 私も平安〜鎌倉の5冊と南北朝時代の2は持っていたのですが、それ以外は持っていませんでした。一部分持っているのに、古本屋の揃いを買うのも気が進まなかったので、じっと復刊を待っていたのでした。できることなら、こういう本は切らさないで欲しいですよね。基本中の基本の道具ですからネエ。史料編纂所のデータベースで大日本史料の綱文が引けるようになっても、やっぱり史料綜覧は必要だと思うのです。さて、出版会の次の復刊は何かな? そろそろ大日本史料の6編・7編あたり? 大日本古文書の家わけは大河ドラマにでも関連しないと難しいでしょうネエ(毛利元就の時に、毛利家文書・吉川家文書・小早川家文書が復刊された)。でもいずれにしても1冊¥15000くらいでしょ。「月2冊刊行されたら、破産だ〜」「ってことは、すっかり買う気でいるのかあ」 そうこうしているうちに、島津家文書復刊のダイレクトメールが来ました。次は島津だったのか。
2000年11月購入。真名(漢文)で書かれた曾我物語です。室町期に成立したと言われる仮名本よりも早く、鎌倉末期あるいは南北朝期に成立したと言われています。この真名本曾我物語は、かつて石井進氏が『中世武士団』(日本の歴史12、小学館)の中で、東国武士団のネットワークを示す史料として大きく取り上げ、歴史研究者にも広く知られるようになりました。今は東洋文庫(平凡社)に入り、読み下し文と詳しい注釈が付されて読みやすくなっています。私も鎌倉時代の婚姻形態を分析する史料として使いました。学位論文の口述試験の際、主査の先生に一番強い調子で指摘を受けたのがこの『曾我物語』の引用に関してでした。鎌倉期の古態を残すといいながら引用するのに、なぜ東洋文庫の読み下し文で引用したのか。原文で引用すべきであろう。それがこの論文で一番問題のあったところ、との仰せでした(本当はまだほかにも問題はあったのでしょうが・・・)。その場では多少ジタバタと反論をしましたが、もちろん仰るとおり。しかし、著書の原稿はすでに出版社に入れてありましたから、初稿に際して『妙本寺本曾我物語』からの引用に改めたのでした。史学科の研究室にはない本でしたので、国文学科の研究室に行って該当個所を書き直し、ページ番号の表記を改めたことを覚えています。その後、影印本である『真名本曾我物語』(山岸徳平・中田祝夫解題、勉誠社)は入手したのですが、引用元である貴重古典籍叢刊の『妙本寺本曾我物語』は持っていませんでした。とても面白い史料ですので、これからも使うことがきっとあるでしょう。これで安心して原文で引用が出来ます(もちろん影印本でのチェックも忘れちゃいけない)。
2000年11月購入。仕事上、急遽必要が生じた本です。その時は借りて使ったのですが、やはり持っていた方がいいだろうと思って購入しました。毎年各地の博物館を巡回して開かれる「発掘された日本列島―新発見考古速報展―」に連動して出版された本を合綴したもの。朝日百科の日本の歴史やその別冊でおなじみの出版形態ですね。旧石器時代から近世・近代にいたるまでの発掘の最新情報が載っており、カラー図版も豊富です。古い時代ばかりでなく、中世にもかなりのページ数が費やされています。毎年の考古学的な情報は毎日新聞社などからも出ていますが、やはり「文化庁編」というのは大きい。最新の2000年版は12月に購入しました。
2000年12月購入。やはり買ってしまいました。しかも全巻一括払で。出費は痛いのですが、一番基本になる辞典ですからしょうがないでしょう。版の組み方は、旧版の縮刷版よりも見やすくなっています。中身の善し悪しは、しばらく使ってみないとわかりません。第二版が出たことで旧版の古書価格がだいぶ下がりました。
2000年12月購入。最近、すっかり古辞書マニアと化してしまったかの感があります。古辞書の重要性は以前にも書きました。数ある古辞書の中でも、中世前期の古記録を読むために最も参考になるのが『類聚名義抄』です。類聚名義抄には、代表的な観智院本(天理図書館所蔵)のほか、図書寮本、西念寺本、蓮成院本三宝類聚名義抄、高山寺本三宝類字抄などがありますが、これら五種類の異本の収録語句を五十音順に配列し直したのがこの本です。『五本対照改編節用集』(勉誠社)をご存じの方は、その類聚名義抄版だと思っていただいていいかと思います。観智院本に関しては風間書房から仮名・漢字索引が出ていますから、それで事足りるという説も・・・。ただ、数段見やすくなっています。全四巻で刊行。
2000年12月購入。たまには新刊の歴史専門書も取り上げないと。ひとことでいうと「かなりマニアックな、いい仕事」でしょうか。『岩波講座日本通史』の「十・十一世紀の日本」、『日本の社会史』の「「院政」支配と貴族官人層」という、近年の中世貴族社会の基本構造・枠組みに関する代表的論文を第一部に配し、第二部には1970年代の蔵人所についてのお仕事を、第三部には1980年代の叙位除目関係の論文を収めています。すでに著名な論文ばかりですが、第二部に「請奏」についての新稿2篇が加えられているのが注目されます。古記録を読んでいて、一番難しいのが叙位除目関係ですから、こうしたお仕事はありがたい。
2000年12月購入。838ページもあるとは言え、いかんせん高い本です。高額故、欲しいと思いながらも買えずにいました。それが、箱無しで20000円、思わず衝動買いしてしまいました。峰岸明氏、中山緑朗氏の著書とともに記録体・記録語に関する基本文献です。惜しむらくは、巻末に語彙索引がないこと。それがあればもっと便利な本でしょう。
それにしても国語学国文学専門の出版社は、なんという値段の付け方をするのでしょうかねえ。少部数→高い→売れない→少部数という悪循環。この本の場合は、まだ内容が良いので、救われますが、中には厚くて、高くて、おまけに賞をとっていても、首を傾げてしまうような本もありますからネエ。