平成17年度 独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金助成出版
藤原経房の日記『吉記』は平安末期から鎌倉初期の重要な日記史料として、日本中世史のみならず、中世文学・日本美術史の分野でも多くの研究に利用されてきた。これは矢野太郎氏による翻刻が史料大成の一部として戦前より刊行されていたことが大きい。しかし、史料大成本は校訂が十全でなく、『吉部秘訓抄』『公事問答記』の書名でまとまって伝来する公事抄出や各種部類記所引の逸文を収録していないことから、現在の学問水準に堪えうるテキストの刊行が望まれていた。そこで本書は、鎌倉前期古写本を初めて紹介するなど、底本を新たにし、これまで活字化されてない公事抄出や逸文を含めた本文を編年体で収録した。また、校訂注や説明注を施し、欄外に主要事項を標記して利用者の便宜を図った。本文編3冊、索引・解題編1冊の全4冊の刊行を予定し、本冊には寿永2年(1183)より建久9年(1198)までの記事を収めた。
【組見本】
(本文編一より)